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劇的ビフォーアフター「伊勢湾を望む別荘に、もう一度命を吹き込む」

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常滑市

劇的ビフォーアフター「伊勢湾を望む別荘に、もう一度命を吹き込む」

伊勢湾を望む別荘に、もう一度命を吹き込む

16年間眠り続けた、大正時代の別荘

伊勢湾を一望する絶好のロケーションに建つ、一軒の古民家。

この住まいが建てられたのは大正3年。当時は夏の避暑を楽しむための別荘として建てられた、建坪70坪の平屋でした。

しかし時の流れとともに人の気配は途絶え、気づけば16年間もの間、無人の状態に。

潮風と風雨にさらされ続けた建物は、土壁が崩れ、瓦は落ち、まるで廃墟のような姿になっていました。

夏を快適に過ごすために工夫された造りは残っているものの、冬の寒さへの備えはほとんどありません。窓の下から引き出す珍しい雨戸や、屋外に設けられた浴室とトイレなど、時代を感じさせる特徴も数多く残されていました。

しかし、その荒れ果てた姿の中にも、この家にしかない価値がありました。

目の前に広がる雄大な伊勢湾の景色。
大正の職人たちが残した繊細な意匠。
そして、百年以上の時を刻んできた住まいの歴史。

私たちは、この家を壊すのではなく、未来へつなぐことを選びました。

最大の敵は「海辺」という立地だった

再生計画で最初に立ちはだかったのは、建物そのものではなく「土地」の問題でした。

美しい景色を望める反面、この家は常に強い潮風にさらされています。

さらに地盤は海辺特有のさらさらとした砂地。

このままでは建物を支える土が流出し、将来的に土台へ大きな影響を及ぼす可能性がありました。

そこで家を囲むように鉄筋入りのコンクリート壁を新設し、地盤をしっかりと保護。

さらに海側には高さ2メートルの杉板による防風壁を設置しました。黒く塗装された杉板は、防腐性能を高めながら建物の景観にも美しく調和しています。

そして、海辺ならではの問題である塩害対策にも工夫を凝らしました。

潮風が運ぶ塩分は、サッシやガラスを傷める原因になります。

そこで井戸水を利用したオリジナルのスプリンクラーを設置。定期的にサッシやガラスを洗い流すことで、建物を長く守る仕組みをつくりました。

景色という財産を、もっと楽しめる住まいへ

立地の課題を解決した後に考えたのは、この家最大の魅力である景色をどう生かすかでした。

そこで駐車スペースの上に、伊勢湾を一望できる4畳半の縁台を設置。

朝日を眺めながらお茶を飲み、夕暮れには海を染める夕景を楽しむ。

そんな贅沢な時間を過ごせる特等席が生まれました。

受け継がれた素材を、新しい暮らしの中へ

玄関の扉を開くと現れるのは、洗い出しの土間と漆喰壁が迎える落ち着いた空間。

杉の天井板や夏用の簾戸(すど)は、もともとこの家に使われていたものを再利用しました。

古き良き趣を残しながら、その奥には家族の成長を見据えた大容量の収納を設置。

受け継ぐべきものと、新たに加えるべきもの。

そのバランスを大切にしながら再生を進めました。

地域の文化を暮らしの中に取り込む

キッチンは、美しく整えられた庭を眺めながら料理ができるアイランド型を採用。

収納力にもこだわり、食器棚や食品庫も備えた使いやすい空間となっています。

また、この家が建つ常滑の地域文化を取り入れるため、洗面所には常滑焼の洗面鉢を採用。

漆喰と杉板の自然素材が織りなす空間に、古い建具を再利用した大きな鏡が映えます。

さらに浴室には、重さ200kgにもなる常滑焼の浴槽を設置。

常滑焼は保温性に優れ、お湯が冷めにくいという特徴があります。

床にも常滑焼の砂やタイルを活用し、かつて冬の寒さに悩まされた住まいに快適性をプラスしました。

浴室の外には杉板で囲まれた4畳半のウッドデッキテラスを設置。

物干し場としても使いやすく、プライバシーにも配慮された空間です。

百年の歴史を、次の百年へ

古民家再生とは、古い家を新しくすることではありません。

その家が歩んできた歴史や風景、地域文化を受け継ぎながら、これからの暮らしに合わせて進化させることです。

16年間静かに眠り続けていた大正時代の別荘は、こうして再び人が集い、景色を楽しみ、家族の思い出を紡ぐ住まいとして生まれ変わりました。

百年以上受け継がれてきたこの家の物語は、これから先も続いていきます。

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