2024/10/03
「古民家に憧れるけど、リフォームの費用はどれくらいかかるのかな?」
古民家をリフォームやリノベーションして、現代の暮らしに合わせながらも趣のある空間で過ごしたいと考える方は少なくありません。しかし、古民家のリフォーム・リノベーションは、具体的な費用相場や必要な工事が分かりにくく、どこまで手を加えるべきか、どのような工事を優先すべきか判断が難しいところです。
今回の記事では、古民家のリフォーム・リノベーションにかかる費用について、工事が必要な部分や種類を交えて詳しく解説します。将来的な住まいとして古民家を検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事のポイント
目次
古民家リフォーム・リノベーションでは、伝統的な日本家屋の良い雰囲気を持ちながら、現代の快適な暮らしができるのが何よりもの魅力。古民家特有の太い柱や梁は、長年の風雨に耐え抜いてきた力強さと、時間をかけて育まれた木の美しさを感じさせる独特の存在感があります。
もともと備え付けられている構造材を活用し、見せるデザインとして取り入れることで、現代の家づくりではなかなか表現できない、奥深い和モダンな雰囲気を醸し出せるのが古民家のリフォーム・リノベーションの良さです。特徴的な要素をそのまま残すことで、古民家ならではの心地よい空間を維持しつつ、現代のライフスタイルに合わせた機能性も加えられます。
また、築年数によって税額を決定する固定資産税においては、古民家を改修することで新築の住宅よりも税金を抑えられるといったメリットもあります。見た目や雰囲気などの良さだけでなく、税金を抑えられる点も古民家リフォーム・リノベーションのいいところです。
古民家リノベーションの間取り、事例に関して以下の記事で紹介しているのでぜひ参考にしてみてください。
古民家リノベーションの間取りのコツ|良さを活かしつつ快適に暮らせる事例を紹介
古民家のリフォーム・リノベーションには、主に4つの種類があります。古民家の状態や土地の状況などによって選択するリフォームの種類が違ってきます。
■設備改修を中心としたリフォーム
古民家の外観や骨組みはそのままの状態で、水回りや内装といった設備の改修を行う方法です。外壁や屋根の補修、床の張替えなど、主に劣化が進んだ部分に対して手を加えることが中心となり、古民家の雰囲気を損なわずに現代の住宅の快適さを確保できます。
特に、古民家の構造自体に大きな問題がない場合や、和の趣をそのまま残したいという場合に最適です。古民家の趣を残しながらも、暮らしやすい家に改善できます。
■部分解体を伴う再生リノベーション
古民家の一部を解体し、床や壁を剥がして内部の柱や梁を補強する方法です。建物の歪みや傾きがある場合に使われることが多い手法で、柱や梁を調整するため建物全体の安定性が高まります。
部分解体を行うことで、必要な箇所を補強しながら、古民家本来の魅力を維持できるのが特徴です。また、構造を強化する段階で耐震性も高くなり、古民家であっても安心して住める環境に改善できます。
■全て解体して再構築するリノベーション
古民家を一度すべて解体し、使える部材を選別して再利用する方法です。解体のときに使えそうな柱や梁を洗い出し、必要に応じて新しい部材と組み合わせて再度組み立てることで、古民家ならではの風合いを残しながら強度や耐久性を高められます。
木材の質感や歴史的な価値をそのまま生かしつつ、現代の基準に合った性能を持たせることができるため、新築の住宅とはまた違った特別な家が建てられるのが魅力です。
■別の場所に移築するリノベーション
古民家を解体して運び、別の土地へ移築する方法です。歴史的に価値の高い田舎の古民家を都市部に移転させたい場合や、建物の建設場所を変える必要があるときに用いられます。
木材や構造材をすべて運んだ上で再度組み立てるという手間がかかるので、費用は他のリノベーション方法と比べて高額になることが多いですが、好みの土地に理想の古民家を建てられるのは大きな魅力。伝統的な建物をそのまま使いながらも、住みたい環境やライフスタイルに合わせた住まいを建てられます。
古民家のリフォーム・リノベーションは、内装や水回りなどの目に見える部分だけでなく、古い建物だけに耐震性や断熱性の補強も必要となります。そのため、通常のリフォームよりも大規模な工事となり、費用もも大きくかかります。
古民家のリフォーム・リノベーションの費用相場は、以下の通りです。
工事内容 | 費用相場 |
---|---|
費用総額 | 約300万円〜500万円(最低限のリノベーション) 約1000万円〜2000万円(全改修リノベーション) |
耐震工事 | 約150万円〜200万円(基礎や柱の補強) 約20万円〜50万円(接続金具の設置など) |
断熱工事 | 約100万円〜300万円(壁や床、天井の断熱施工) |
屋根や外壁工事 | 約50万円〜350万円(屋根葺き替えや外壁塗装) |
水回り工事 | 約50万円〜150万円(キッチン) 約20万円〜50万円(トイレ・洗面所) 約100万円〜150万円(浴室) |
バリアフリー化 | 約10万円〜50万円(段差解消や手すり設置) 約50万円〜150万円(土間の解消、床のフラット化) |
表の金額はあくまで目安ですが、古民家のリフォームをとことんこだわって行うと、2,000万円~3,000万円と新築を建てるの変わらない程の費用がかかる可能性もあります。優先してリフォームしたい場所を検討しつつ、コスト削減のためにそのままの状態を適度に取り入れるのことも考えておきましょう。
築50年以上が経過する古民家のリフォーム・リノベーションで、耐震工事は必要な項目となります。特に、1981年以前に建てられた古民家は現行の耐震基準を満たしていないケースが多く、地震時に倒壊の恐れが高く危険です。
具体的な工事としては、耐震診断を行い、必要に応じて柱や梁の補強や壁の強化などが行われます。柱や梁の補強は、接続金具を取り付ける程度であれば費用は比較的抑えられますが、老朽化が進んでいる古民家では柱の交換など大規模な工事が必要になり、費用が増大することも。
耐震補強工事の費用は高いですが、地震の多い日本で安心して住むためにも、耐震性を必ず確保しましょう。
古民家のリフォームやリノベーションにおいて、断熱工事も優先度は高いといえます。築年数が長い古民家では、もともと断熱材が使用されていなかったり、経年劣化で断熱性能が大きく低下していたりすることが多く、冷暖房の効率があまり良くない状態にあります。
外壁や屋根、床に断熱材の追加は、室内の温度を一定に保ち、夏の暑い時期も冬の寒い時期でも快適な住まいにするためには必要です。また、断熱工事と同時に、窓や玄関からのすきま風を防ぐためのサッシの交換、内窓の増設も検討して気密性を上げるのも良いでしょう。
工事の規模によって費用はまちまちですが、断熱性が高くなれば住み心地がいいだけでなく、長期的な省エネにもつながるのでおすすめです。
古民家のリフォームやリノベーションを行う際、古民家の状態によっては屋根や外壁の工事が高い確率で必要となります。築年数が経過した古民家では、屋根材や外壁材が劣化して雨水が侵入しやすくなっており、雨漏りの原因になることがよくあります。
また、外壁や屋根の傷みが進むと、内部の柱や梁などの構造部分にまで被害が及ぶ可能性もあるため、適切な補修やメンテナンスが必要です。具体的な工事内容としては、傷んだ瓦の交換や屋根の葺き替え、外壁材の張り替えなどが挙げられますが、費用は補修の規模や使用する素材によっても大きく変わってくるでしょう。
築年数の古い物件では、キッチンや浴室、トイレなどの設備が現代の生活スタイルに合わないため、使い勝手を考えると水回り設備のリフォームはまず行った方が良いでしょう。
また、水回りの設備は老朽化が進むと水漏れや詰まりなどのトラブルも発生しやすいため、給排水管の交換や設備のメンテナンスも必要です。古民家では長年の放置と経年で給排水管が劣化していることが多く、適切にメンテナンスをしていなければ、将来的に大きな修繕が必要になる可能性もあります。
古民家のリフォーム・リノベーションを行う際には、バリアフリー化を視野に入れておくのも良いでしょう。古民家には、玄関や土間に大きな段差が設けられていることが多く、高齢者や身体の不自由な方にとって上り下りの負担がかかる可能性があります。
具体的なバリアフリー化工事としては、段差を解消してフラットな床面にしたり、手すりを設置したりすることが挙げられます。特に土間から室内への上がる部分の段差は、高齢者にとって大きな負担となりやすいため、スロープの設置などで改善しておくと生活しやすくなるでしょう。
バリアフリー工事は箇所ごとの費用だと比較的抑えられますが、建物全体となると費用は大きくなる傾向があります。家族構成やライフステージを考えつつ、住む人の使いやすさを優先してリフォームする部分を考えましょう。
ここからは、古民家のリフォームの費用を抑えるコツをご紹介します。
古民家のリフォーム・リノベーションの際は、全ての設備や構造の改修は考えず、既存の使える設備は上手く活用する方向性で進めると費用をより安く抑えられます。特に、柱や梁といった古民家の主要な構造材は、長年家を守ってきた頑丈な素材が多いため、取り替えずに再利用するのが望ましいです。
また、古びた内装や建具でも修繕や塗装によって再び使用できるケースも多く、費用を抑えながらも古民家の風合いを活かせます。古民家のリフォーム・リノベーションでは、プロの意見を聞きながら既存の素材を活用すると良いでしょう。
古民家のリフォーム・リノベーションでより費用を抑えるためには、工事する部分に優先順位を決めておきましょう。住宅の安全性の観点から優先度の高い建物の基礎や屋根、構造的な強度に問題がないかを確認するのがまずは大切です。
その後、断熱性や水回りなど生活に直結する部分の改修を検討していきましょう。予算が少なく限られている場合は、キッチンや浴室といった毎日使う設備を中心に改修し、その他の部分は住んでいて必要になれば少しずつ進めていくというのも選択肢の一つです。
家族や施工会社と相談し合いながら優先順位を決めて、費用を抑えましょう。
各種補助金や減税制度をうまく活用すれば、古民家のリフォーム・リノベーションの費用を抑えられます。費用を少しでも抑えるためには、国や自治体が行っている制度について知っておくことが大切です。
たとえば、リフォーム・リノベーションに関連した補助金や減税制度には次のようなものがあります。
減税制度
制度 | 内容 | 適用対象 |
---|---|---|
所得税の控除制度 | リフォームの種類に応じて、所得税の控除を受けられる制度
耐震や省エネ、バリアフリー改修工事などが対象 |
耐震、省エネ、バリアフリー改修など |
固定資産税の軽減 | 住宅の省エネやバリアフリー改修を行った際に、一定期間の固定資産税が軽減される制度 | 省エネ改修、バリアフリー改修 |
贈与税の非課税制度 | 子供や孫への住宅資金の贈与時に、贈与税の一部が非課税になる制度 | 住宅取得やリフォーム資金 |
補助金制度
制度 | 内容 | 適用対象 |
---|---|---|
耐震改修補助金 | 建物の耐震性を高める改修工事に対して補助金が支給される制度 | 耐震性が不足している住宅 |
省エネ改修補助金 | 断熱性能向上やエネルギー効率を高める設備導入に対する補助金制度 | 省エネ改修工事 |
バリアフリー改修補助金 | 高齢者や要介護者のためのバリアフリー化工事に対する補助金制度 | 手すり設置、段差解消工事など |
古民家解体補助金 | 危険な状態の古民家解体費用の一部を補助する制度
自治体によって内容が異なる |
老朽化した古民家の解体 |
地方自治体の補助金 | 各自治体が独自に行う、古民家再生やリノベーション支援に関する補助金制度 | 各自治体の条件に該当する住宅 |
耐震工事や省エネ改修、バリアフリー化を行う際には工事に対して自治体や国から補助金を受けられる可能性も高く、リフォームにかかる総費用を大幅に抑えられることがあります。また、所得税や固定資産税の控除対象となり、同様に費用を抑えられる可能性は高くなります。
古民家リフォーム・リノベーションで使える補助金や減税制度については、以下の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
【2024年版】古民家リフォーム・リノベーションで活用できる補助金・減税制度まとめ
ここからは、実際のリフォーム・リノベーションの実例の住宅をご紹介します。
築100年のどこか懐かしさを感じる平屋の古民家。モダンさを感じさせながらも、日本の古き良き生活様式を思い出させるような落ち着いた佇まいです。
玄関先は広い土間スペースをそのまま採用し、たくさんのお客様を一度に迎え入れてもゆったりと入れる開放的な空間に。昔ながらの風格を尊重した外観ですが、建物には外張り断熱工法を施し、夏場でも冬場でも快適な住まいです。
旧家にもともとあった囲炉裏を復活させたリビングスペースは、家族や友人との団らんが楽しみになりそうな空間に仕上がっています。
海を臨むかたちに建てられた築100年の古民家。外観からは日本の厳格な趣を感じますが、玄関を開ければ仕切りの少ない大空間が広がっています。
内装には、無垢の床や剥き出しの梁を採用し、どこか高級旅館を思わせる雰囲気に。空間を仕切る帯戸にはもともと備え付けられていたものを再利用しているため、古民家の歴史や息づかいを肌に感じられます。
広くて開放的なリビングスペースは、隣接した部屋の戸を開ければさらに大きな一つのつながりの部屋に早変わり。家族や親戚、友人、近所の住人がたくさん集える住まいです。
他にも多くの事例があるため、以下のリンクからチェックしてみてください。
古民家リノベーションの事例5選!メリット・デメリットや業者の選び方も解説
今回は、古民家のリフォーム・リノベーションの費用相場や費用を抑えるコツをご紹介しました。
古民家を綺麗にリノベーションすれば、日本の趣を感じる住まいが実現できますが、費用がかかります。既存の設備や補助金制度を上手く活用できれば、より費用を抑えた古民家のリフォーム・リノベーションが実現するでしょう。
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